研究者情報

川﨑 盛通

准教授

KAWASAKI Morimichi

変換群から空間を研究する。

数学部門 数学分野

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研究テーマ

ハミルトン微分同相群の群論的・幾何的性質からのシンプレクティック多様体上の(ハミルトン)力学系の研究

研究分野シンプレクティック幾何学, 接触幾何学, 位相幾何学, 幾何学的群論
キーワードシンプレクティック幾何学, ハミルトン微分同相群, ハミルトン力学系, (部分)擬準同型, カラビ部分擬準同型, (部分)擬状態, 呉--Schwarzスペクトル不変量, 有界コホモロジー

研究紹介

シンプレクティック幾何学を専門としています。シンプレクティック幾何学は歴史的には解析力学のハミルトン系に由緒があり、近年は他の様々な分野との関係でも注目を浴びています。
私は特に、シンプレクティック多様体の変換群の一つであるハミルトン微分同相群の距離構造や群構造に関心があって研究しています。
また、その応用として可積分系のnon-displaceable fiberなども研究していますし、あるいはハミルトン微分同相群で用いた群論的な議論を他の変換群(接触微分同相群や微分同相群など)に適用することにも関心があります。

代表的な研究業績

Relative quasimorphisms and stably unbounded norms on the group of symplectomorphisms of the Euclidean spaces, J. Symplectic Geom. 14 (2016), no. 1, 297--304.
Rigid fibers of integrable systems on cotangent bundles (joint work with Ryuma Orita), J. Math. Soc. Japan 74 (2022), no. 3, 829--847.
Commuting symplectomorphisms on a surface and the flux homomorphism (joint work with Mitsuaki Kimura, Takahiro Matsushita, Masato Mimura), arXiv:2102.12161, to appear in Geom. Funct. Anal.
自己紹介

鹿児島県出身です。

学歴・職歴2011年 東京大学理学部数学科 卒業
2013年 東京大学大学院数理科学研究科数理科学専攻 修士課程修了
2016年 東京大学大学院数理科学研究科数理科学専攻 博士課程修了
2013-2016年 学術振興会特別研究員(DC1,東京大学大学院数理科学研究科)
2016-2018年 IBS Center for gemetry and Physics, research fellow
2018-2021年 学術振興会特別研究員(PD,京都大学数理解析研究所)
2021-2023年 青山学院大学理工学部数理サイエンス学科(旧物理・数理学科) 助教
2023年- 北海道大学理学研究院数学部門 准教授
所属学会日本数学会
居室理学部4号館

数学部門 数学分野

川﨑 盛通

准教授

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いま没頭している研究テーマは何ですか?

専門は幾何学で、特に「シンプレクティック幾何学」を研究しています。 幾何学は図形や空間を主な対象とする数学の分野ですが、その中でもシンプレクティック幾何学は、物理学に由来を持つものです。現代の幾何学は大きく「位相幾何学(トポロジー)」と「微分幾何学」に分けられますが、シンプレクティック幾何学はその両方に関わりがあります。
私はその中で、「変換群」という対象に強い関心を持っています。 変換群とは、「空間上の流れの全体」を代数学的に定式化したものです。これを代数的・幾何的な視点で捉えることで、シンプレクティック多様体上の力学系に応用できないかと考えています。
大学の数学科で学ぶ幾何学は、高校までの図形問題とは違い、抽象的かつ高次元な対象を扱うため、簡単には絵に描けません。 そのため、論理を使って厳密に定義し、証明していく必要があります。しかし、そうした作業の中で、幾何的な直感(図形的なイメージ)を養うことになります。論理とイメージを行き来するうちに、研究対象が段々と「見えてくる」。その過程が面白いですね。

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研究者になったきっかけは何ですか?

数学を好きになった原点は、小学生の頃から通っていた公文式です。 計算だけではありますが、先の学年の問題を暗算で解くことが楽しかったのを覚えています(教室の方針としては暗算は非推奨でしたが)。 それ以外の特別な勉強はしていなかったので、いわゆる中学受験の「鶴亀算」のような問題はさっぱりでしたが、連立方程式は小学5年生のころには暗算で解けるようになっていました。
ただ、大学に入学した頃は、数学そのものより現実世界への「応用」に興味がありました。 私が入学した東京大学は、北海道大学の「総合理系」と同じく、入学後に専門を選ぶ仕組み(進学振り分け)です。当時から数学は好きで得意でしたが、数学科に行って「純粋数学」(応用を意識しない数学)を専攻することには迷いがありました。しかし、実際に大学の授業を受けてみて、自分は厳密な議論を通してしか数学を「納得」できないのだと気づきました。 例えば物理学の授業でも高度な数学は使われますが、厳密な定義なしに「こういう計算をする」と説明されても、どうしても納得感が得られなかったのです。 それに加えて、数学科でも応用の分野が学べると聞いたこともあり、数学科への進学を決めました。
進学後もしばらくは応用数理を志していたのですが、学部3年生の時に転機が訪れました。数学者ジョン・ミルナーの『モース理論』を読み、現代幾何学の面白さに魅了されてしまったのです。 それからは、現実世界への応用よりも数学自体の面白さに興味が移り、そのまま純粋数学の研究者になっていました。

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研究者になるまでの思い出を教えてください。

大学院生の頃、研究のために数カ月間、イスラエルのテルアビブに滞在したことがあります。 もちろん、近い分野の研究者との交流が目的でしたが、空いた時間には観光も楽しみました。 もともとオリエント史が好きなので古代遺跡にも足を運びましたが、それ以上に、現代イスラエルの建国に関わる近現代の史跡や博物館が非常に興味深かったです。
イスラエルは、世界中に離散していたユダヤ人が、近現代になって建国した国民国家です。 聖書に由来する長い伝統を持つ一方で、近代的な「国民国家」の理念に基づいて人工的に作られた国でもあります。 そうした国家としての「二面性」を現地で肌で感じられたのは、良い経験でした。
以前、イスラエルの政治哲学者ヨラム・ハゾニー氏の著書『ナショナリズムの美徳』を興味深く読みました。あのようなユニークな政治思想が生まれるのも、イスラエルという国の特殊なありように由来するのでしょう。
皆様も、ぜひ若いうちに海外を経験してみることをお勧めします。